目的による管理(5)
前回まで、目的による管理の大枠に関する考え方を確認してきました。今回は、目的を管理の中にどのように生かしていくかを考えます。
8.単なる目標から目的による目標へ
目的を最も身近に考えることができるのは、現状業務を目的で評価するという考え方を利用することです。具体的には、すでに多くの企業で導入されている目標管理に目的という概念を取り入れることです。
目標による管理は、組織側から捉えた目標を設定しています。例えば、売上目標、販売台数、訪問件数、提案件数などです。
このような組織における内面の目標は、繰り返しになりますが、目標が目的化してノルマとなり、今問題となっている社会保険庁の例でもあるように、「ノルマを達成すれば何をしても良い」というような組織メンバーにとって良ろしくない影響を与えます。
そこで、この目標体系の中に、目的により導き出された目標を設定すると、単なる目標ではなく、社会的な使命に裏付けられた目標を持つことができるようになります。
例えば、プリンターなどのオフィス機器を販売している企業であったとします。この会社の目的は、ユーザーのオフィス生産性を向上することにあったとします。会社の目的は、「オフィス生産性が向上したユーザー」に貢献することとなり、この会社の目標は、「ユーザーにおけるオフィス生産性の向上や書類作成業務の効率化」といったものとなります。
このような目標は、ユーザーサイドに立った目標であり、ユーザーに喜ばれる目標、つまり貢献目標となります。ここで共有化される価値観は、ユーザーに貢献できていれば、結果として売上に結びつくということです。
売上という目標を全面否定するのではありません、売上という目標は、ステークホルダーに貢献できたという真の目的の達成を通して得られるものであると考えます。
このように目的による目標を捉えていれば、現在の事業(商品・サービスの提供)のステークホルダーへの貢献を敏感に察知し評価することができ、事業の見直しや転換に関して、抵抗なくスムースに移行でき、イノベーションのジレンマに陥ることのない組織文化を創造できると考えます。
9.ステークホルダーの目標が自組織の目的
目的に関していろいろ述べてきましたが、自組織の目的を考えるとき、単純に、ステークホルダーの目標が自組織の目的であると考えれば良いという点を気付かれた方は多いと思います。
目的に関して、難しく複雑に考える必要はなく、単純に、自分達が貢献しようとしているステークホルダー(お客さま)は、どのような目標を持っているのだろうか、つまり、どのように成りたいと思っているのか?を考えれば、目的は見えてくるということです。
よく言われる「お客さま視点」で考えるということです。
至極、当たり前のことですが、目標を設定するときに、お客さまが不在になることが問題なのです。時として、間違ったビジョン設計や経営計画の策定を見ていると、お客さまに関する言葉はありますが、具体的な展開は、お客さま不在の売上や利益を目標とした競合との競争戦略などが中心となっています。
お客さまという視点は、どこに行ったのでしょうか、お客さまに貢献しない事業を続けて売上を伸ばすことに何の意味があるのでしょうか、自分の首を絞めているだけでは無いでしょうか。
本来のビジョンや経営計画では、ステークホルダー(お客さま)の目標が描かれ、そこに貢献するために自組織はどうあるべきかという視点でビジョンが語られ、お客さまの目標から市場規模を推定し、競争戦略へとつなげるという思考展開になるべきです。
バーナードは著書「経営者の役割」を思い出します。彼はそこで、「目的が与えられても、目的が組織を構成する努力を提供している人々によって容認されるのでなければ、協働的活動を鼓舞することにはならない。目的の必要性は知っていても、目的の重要性を認識しそれを意識して活動している人は少ないからである。」と言っている。
この問題は、ビジョンや経営計画に目的の視点がしっかりと埋め込まれ、その達成活動において、組織メンバーと話し合いができるような”目的による管理”を実践できれば解消できるだろう。
by 尾嶋 繁
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