製造派遣の功と罪
製造派遣の功の面は、生産現場において、必要な時に比較的タイムリーに必要なだけ要員を確保することができるようになりました。反対に、生産量が落ちれば、余剰となる要員を比較的タイムリーに契約を解除でき、企業の業績を急激に悪化させる要因の一つである人件費のバッファとなりました。
このことは、“雇用は、ある企業で余剰になっても、他の企業で不足しており、常に流動化し、就業希望者が異常(ある程度の失業率はあります)に余ることはない”という前提で成立します。今日の世界同時不況は、この前提を遥かに超え、例外と言えるように、前提を根底から覆してしまった。
一方、製造派遣の罪の面は、見えにくい部分ですが、日本の製造現場の生産性を低下させてしまった。たとえば、派遣労働力の柔軟性がゆえに、納期を守るために知恵を絞らず、最も単純な増員という手段を取り易くなりました。あるいは、品質が問題であるとなると、検査要員を増員し、品質の悪い製品を流出させないような体制を取り易くなりました。
結果、日本の製造現場の現場力は低下してしまったといっても過言ではありません。たとえば、人を簡単に補充できなかった時は、納期を守るために創意工夫を凝らし、生産性を向上させました。品質を維持するために、技術的な問題解決に情熱を燃やしました。
また、派遣労働者は、製造ラインや直接物に触る作業を分担し、設備のチョットした停止の解除や刃具交換などの間接的な作業を正社員が担うようになりました。この結果、製造部門における直間比率が悪くなり(間接比率が高くなる)、製造全体の生産性を低下させてしまった。
このことは、直間比率の問題だけではなく、製造ライン作業における良いものを作る勘どころ(ノウハウ)を蓄積できなくしてしまい、問題解決の場面や管理の場面で、机上の論理(…だろう、過去の経験からの推察)で議論されるようになり、問題解決が行き詰る場面にも遭遇するようになりました。
聞いた話であるが、“あるメーカーのデジカメを最近購入した人が、新品の状態で初めて使おうとしたが、何かが作動せず使えなかったので、取り換えてもらった。“と聞いた。派遣(非正規社員)切りとの関係があるかどうかは分からないが、あまりにもタイムリーな話であった。
製造派遣の問題は、単に雇用の問題に止まらず、日本の産業にとっても深刻なダメージを残すかもしれない。今回の異常な状態の経験から、製造派遣の問題を考え直すことは良いことだが、セーフティネットなどの整備と併せて、各企業における派遣の活用に関しても整理することが必要ではないか!
by 尾嶋 繁
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